1 100円均一のストップウォッチ
今回使用した、100円ショップで購入したストップウォッチです。
2 回路図
マイコンは、小型でSLEEP時の消費電力が少ないフラット形のPIC12F675を使用します。3Vのボタン電池CR1220で作動させます。
ストップウォッチへの電源V+へは、マイコンGP5から定期的に高周波パルス信号を出し100μFのコンデンサに電荷を保持させることで、1.5V電圧を供給します。
マイコンのGP1から高周波パルスを抵抗とコンデンサで約1.5Vの電圧にして、これを約40msSTART/STOP部に入力することで、ストップウォッチのスタートまたはストップ作動を行います。
今回使用した100円ショップのストップウォッチは、どのような状態からでも、V+=0VとしながらSTART/STOPへパルス信号(確認した電圧は0.7V程度)が入力されると、内部が初期化されます。初期化後、電源をいれると(V+=1.5V)、時計モードで「1:0000」が表示され時を刻み始めます。時計モードの状態で、Mode信号に1回1.5Vのパルス信号を入力すると、ストップウォッチのスタート待ち状態「0:0000」になります。
この特性を利用し、ストップウォッチのスタート直前までの作動準備を、
①V+=0Vとし、START/STOPへパルス信号を入力
②V+=1.5V供給し、ストップウォッチを起動
③Mode信号に1回パルス信号(マイコンの約3V出力を100kΩ介して)を入力。
の順で行います。
ストップウォッチのResetスイッチは使用しません。
注:100円ショップのストップウォッチの初期化の特性、Mode信号に対する状態変化の特性は変わる可能性があります。特性はストップウォッチ単体で確認することができますので、最初に確認してください。異なった特性を有しているようであれば、それに合わせて回路やプログラムを工夫してください。
3 フローチャート
タクトスイッチを押すと、マイコンは①初期化信号を出力、(V+=0VとしながらSTART/STOP信号を出力)、②V+を供給、③Mode信号を出力、を順に行いストップウォッチの計測準備が整います(0:0000表示になる)。 同時に初期音発生、次に予告音を発生させます。所定時間後に用意音、その後、数秒後にスタート音とともに、Start/Stop信号を出力して、計測を開始させます。
ゴール時、タクトスイッチを押す(1回目)ことで、Start/Stop信号が出力され、計測が終了しタイムが表示されます。
次の計測のために再度タクトスイッチを押すと(2回目)、初期化に戻って、次のスタートの準備に入ります。
計測開始後2分間の間に計測が終了しないと(タクトスイッチが押されないと)SLEEP状態になります。また、計測終了後2分間次のスタートのためのスイッチが押されないとSLEEP状態になります。
SLEEP状態で、スイッチが押されると、初期化に戻り計測準備に入ります。
4 表示部の制作
(1)ストップウォッチから必要部分の取り出し
剪定ばさみ等を使って液晶サポート部分を取り出します。
同時に、液晶と導電ゴム、基板、基板の取り付けねじ4本、マイナス電極等を取り外します。
(2)ストップウォッチ基板の加工、配線
基板は、液晶サポート部分に取り付けたときに、はみ出る部分がありますので、はさみで切ります。
もともとついていた、円柱形のクリスタルは、かさばるので表面実装用の32.768kHzの水晶に交換します。
配線をはんだ付けします。配線長さは、基板右端からから7cm程度としてください。はんだ付けする部分は、表面の緑のレジストをカッターで丁寧に削りとります。
クリスタルや配線が、液晶サポートを取り付ける際に干渉しないように、取り付け場所には注意してください。
サポート金具は、ケーブルフック(サイズS)を使用します。写真の点線の部分をはさみで切って、ラジオペンチで形状を整えます。基板の穴Aの幅にあわせてφ1.2の穴を2箇所あけ、また後述する指装着カバー取付け用に2mmの穴をあけ、ナットを半田付けします。
加工した枠と基板、液晶表示部、サポート金具を再組立します
5 制御部の製作
(1)子部品準備
<基板>
両面スルーホールガラス・ユニバーサル基板2.54mmピッチ(72mm×47mm)を削って作ります。
<タクトスイッチアッシー>
タクトスイッチを、フラット型マイコン(PIC12F675)を背負うくぼみを作るため、やすりで削ります。削りが足らないと、最終組み立て時にM2のねじがマイコンと干渉してしまいます。
次に、プログラムを書き込んだマイコンを瞬間接着剤でタクトスイッチに固定します。Vddの位置に注意します。マイコンの足を半田付けしやすいように伸ばします。
タクトスイッチの端子とマイコンのGP4端子を配線します。
タクトスイッチの片側の足2本を切ります。片側ははんだ部を残し、片側は根元から切ります。
<-電極>
ストップウォッチの電極を、基板の穴に挿入できるように削って、ボタン電池の-電極を作ります。
<ナット>
ナットは、取付スペースに合わせ、2か所を削ります。
<+電極>
ボタン電池の+電極は待ち針をラジオペンチ等で曲げて作ります。電池の前後用に2形状作ります。
<圧電スピーカ押え兼電極>
圧電スピーカ押え兼電極は、クリップをラジオペンチで曲げて作ります。
(2)基板取付
基板に取付く部品一式です。
これらを順番に取り付けていきます。
<+電極(前)、ナット等の取付け>
+電極(前)を取り付けます。電池の接触の安定化のため、あとでプラスの電極の中央を切断するため、電極の左右をリードでつなぎます。
ナットをねじで仮止めして、左右をはんだ付けします。PIC12F675のVdd、Vssへつなぐリードをこの段階ではんだ付けしておきます。Vssへつなぐリードは、固定のため基板のどこかに仮はんだ付けしておく等工夫をしてください。
<+電極(後ろ)の取り付け>
電池が+電極(前)と+電極(後)に挟まるように+電極(後)をはんだ付けします。使用中の衝撃で接触不良が起きないように+電極(後)の高さが電池より高くならないよう(わずかに低くなるよう)にしてください。
<-電極の取り付け>
-電極を取り付けます。ステンレス用フラックスをぬってからはんだ付けします。
基板裏側は6項の写真を参照ください。
<マイコン、抵抗、コンデンサ取り付け>
マイコン、抵抗、コンデンサの取り付け配置図です。
まず、タクトスイッチアッシーを取り付けます。 つぎに、Vssのリードをマイコンの8番にはんだ付けします。
10kΩ、100kΩ抵抗の足は、基板側をはんだ付け後、マイコンの足へ直接はんだ付けします。抵抗の足の形は写真を参考にスペースに合わせて整えてください。はんだが隣の足にブリッジしないように注意してください。
0.1μFのコンデンサの抵抗側の足は、上述の10kΩ抵抗を取り付ける際、同じ基板穴に挿入し、はんだ付けします。GND側の足は、ナット取付け時に基板穴がすでにはんだでふさがっているので、あらかじめ足を短く切っておき、ナットのはんだ部に溶かし込みます。
基板の裏側は6項の写真を参照ください。
左側部分の部品取り付け状態です。
Vddの配線、抵抗とコンデンサを取り付けます。
基板の裏側は6項の写真を参照ください
<圧電スピーカ押え兼電極取付け>
圧電スピーカ前方上部とやや隙間が開く様に、また、圧電スピーカの電極との接触が確実になるよう、ラジオペンチで形状を調整します。配線束ね部を残して、不要部分をニッパで切断します。
<配線等処理>
圧電スピーカへの信号を送るため、PIC12F675の5番ピンと「圧電スピーカ押え兼電極」を配線します。
電池の接触不良防止のため、電極(前)の中心をニッパで切断します。電池が電極の左右に均等にあたるようにラジオペンチ等で形状調整します。電池を傷つけないようバリはダイヤモンドやすりで取ります。
6 全体組立
表示部の配線をつなぎます。指装着時に適度なたわみになるよう、また、配線がまとまるよう、それぞれの長さを調整します。
配線は、熱収縮チューブで束ねます。
緑と黄色の配線は、基板前部に瞬間接着剤で固定します。
<指カバーの取り付け>
指カバーを作ります。使い終わったスティックのりのキャップから、はさみ、カッターで形状を切り出します。角は面取りします。木工用ドリルのφ2.5で、3か所穴を開けます。
表示部、基板の2か所のナット部に、指カバーをM2ねじで取り付けます。
<制御部保護カバーの製作>
基板露出のままでは、けがの基になりますので、保護カバーを作ります。
使わなくなったポイントカード等で、まず、型を作ります。熱を加えて曲げて作ります。熱収縮チューブは熱収縮時縮むので、窮屈にならないよう、型の後ろ側を長めにしておきます。カバーが窮屈だと使用中に圧電スピーカにカバーから力が加わり、電極部の非接触の原因となります。
側面はφ20の熱収縮チューブを長さ1.5cmぐらいに切り、型に被せてライター等で熱を加えて収縮させカバー形状にします。このときスイッチ部に両面テープを巻くなどして熱から保護しておきます。後部形状を①圧電スピーカ穴が見えるように、②かぶせやすいように、また、③外れないように、と形状を整えながらハサミで切ります。
上面はΦ25の熱収縮チューブを4cmぐらいに切り、ハサミで切って広げます。熱をかけて、型に押し付けて、形状を作ります。上面形状に合わせてハサミで切ります。
側面と上面を市販の万能接着剤で接着します。
<表示部保護カバーの製作>
表示部のカバーはφ25の熱収縮チューブを1cmぐらいに切り、表示部に被せます。熱をかけて収縮させます。
<完成状態>
完成状態です。
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7 改良点情報
(1)電極(2017年4月)
ポケット等に入れてジョギング等すると電池が動き、電流が瞬断、復活するとそのタイミングで作動することがあります。電池を動きにくくする電極の取り付け例を以下に示します。
前側電極は写真のように「くの字」に曲げ電池を抑えます。
後ろ側電極は、まず電池の円弧に合わせて形状を作ります。 電池を入れるとき「ぱちん」と音がし、電極と基板の間に爪を刺せば電池が外れるよう、位置調整をしながら電極のはんだ付けをします。
(2)抵抗(2017年5月)
100円ショップのストップウォッチとの相性(ばらつき)で、抵抗R2=100kΩでは作動電圧が足らずストップウォッチストップウォッチモードに切り替わらない場合がありました。 R2=68kΩにした場合ストップウォッチのばらつきをカバーして作動する様です。
R2=68kΩで製作することをお勧めします。または、同様のケース(ストップウォッチモードに切り替わらない場合)が発生した場合の故障探究の一つとしてください(注:もちろん、配線がきちんとされていることことの確認が第一です)。